平成18年度から2年間の研究主題を以下のように設定した。

「確かな表現力」をはぐくむ授業の追求
− 生徒一人一人が熟考した結果を活用し,表現する活動を通して −


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(1) 研究の課題

 ・ 「社会的な思考・判断」(社会科),「数学的な見方や考え方」(数学科),「科学的な思考力」(理科)等の観点がやや低く,事象
  や課題に対する生徒の思考や発想の質的な高まり,ものの見方や考え方の広がり,深まりという面においては,まだ十分であ
  ると言えない。

 ・ 「話すこと」「書くこと」(国語科),「表現」(英語科)においては,根拠を明確にしながら,自分の考えを論理的に筋道を立てて
  相手に分かりやすく伝える力について,指導の工夫をより一層加えていく必要がある。


(2) 研究の方向

 これらの課題を解決するためには,生徒一人一人に,〔1〕思考力,分析力,考察力,〔2〕伝達力,表現力等の確かな力を 身に付けさせる必要がある。そこで,PISA型読解力を基盤とした「確かな表現力」に視点をあて, 全教育活動を通して実践研究を進めていくこととした。

※ 「確かな表現力」とは,次のようにとらえている。
 学習課題に対して,既習事項や過去の体験・経験を基に論理的に考察し,その熟考した結果を活用して
根拠を明確にしながら,様々な表現方法を用いて筋道を立てながら相手に分かりやすく表現する力


(3) 研究計画と組織

全教育活動を通して実践研究を以下の計画で進めていく。

研究年度 平成18年度 平成19年度
公開年度 平成19年度 平成20年度
研究の概要  学習課題に対して,生徒一人一人が既習事項,
過去の体験・経験等を基に「熟考した結果を活用
し,表現する活動」を通して実践研究を進めていく。
 研究の中心を表現活動に移し,自分の考えや意
見を的確にまとめ,「生徒一人一人が確かに表現
する活動」を通して実践研究を重ねていく。
公開授業 全教科及び特別支援教育 全教科及び特別支援教育


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(1) 研究の視点

以下の4点を研究の視点として研究を進めることとした。

・ 各教科及び特別支援教育で「確かな表現力」をどう捉えるか。
・ 生徒一人一人が的確に情報を取り出し,解釈させるための工夫
・ 既習事項や過去の体験・経験を基に情報を整理し,熟考・評価させるための工夫
・ 表現方法を選択し,自分の考えや意見を的確に表現させるために工夫

(2) 研究構想


(3) 目指す授業像

・ 生徒が課題を自分のものとして捉え,積極的に追求しようとする授業
・ 生徒が既習の知識・技能や過去の体験・経験を生かし,熟考する場面がある授業
・ 自分の考えや意見を論理的に筋道を立てて的確に表現する場面がある授業
・ 自分の考えや意見を伝え合い,ともに練り合い,高め合う場面がある授業
・ 生徒の知識の広がりや理解の深まり,技能・能力の高まり等が見られる授業

(4) 各教科の構想

教科 研究主題/副主題 研究の重点
国語 「生活に生きる『説明する力』を高める授業の追求」
−「書くこと」における手立ての工夫を通して−
1 情報収集や情報活用能力を高めるための指導の在り方
2 「書くこと」における手立ての工夫
3 「話すこと」における手立ての工夫
4 自分の意図を伝えるための効果的な表現方法を選択さ
 せる手立てについて
5 適切な自己評価・相互評価・個人内評価の在り方の工夫
社会 「社会科における表現力を高める授業の追求」
−社会的な判断力を育成するための
                学習活動の工夫を通して−
1 情報を正確に読み取り,解釈するための基礎的な技術の習得
2 意志決定場面における理解の状況に応じた表現方法の工夫
3 社会的な判断力を育成する教材の開発
4 多様な表現活動の場の設定
数学 「『数学的な表現力』を高める授業の追求」
−事象の中から情報を読み取り,
                再構成する活動を通して−
1 読み取った情報を整理し,再構成させるための工夫
2 単元を通した継続的な表現活動の工夫
3 様々な方法を用いて自分の考えを数学的に表現させるための
 工夫
理科 「科学的な表現力を高める授業の追求」
−情報を科学的に読み取り,自分の考えを
       構築するための手立ての工夫を通して−
1 予想や仮説を明確に持たせるための支援の在り方
2  観察,実験で得られたデータや結果を科学的に処理させ,それ
 をもとに考察させるための手立ての工夫
3 日常言語や科学言語を的確に置き換え,根拠を明らかにしながら
 表現させるための手立ての工夫
音楽 「豊かな感性を育み,表現力を高める授業の追求」
−楽曲に対するイメージを持って
            表現する手立ての工夫を通して−
1 音楽に親しみ味わうための授業展開の工夫
2 楽曲の構成を理解し,イメージを持って表現するための手立ての
 工夫
3 ステップシートやさまざまな学習カードの工夫・改善
4 表現力を高めるための指導と評価の工夫
5 音楽の生活化を図るための手立ての工夫
美術 「豊かな表現を目指した授業の追求」
−造形的なものの見方・感じ方を
        深めるための学習活動の工夫を通して−
1 美術の基礎的能力を確実に身に付けさせるための手立ての工夫
2 適切な自己評価・相互評価の在り方の工夫
3 表現力を高めるための鑑賞位置づけの在り方と方法の工夫
保健
体育
「保健体育科における表現力を高める授業の追求」
−思考力・判断力をはぐくみ,個々の運動技能を
        高めるアドバイス学習を通して−
1 自己評価と相互評価活動を充実させる学習カードの工夫・改善
2 他者観察により自己理解を促すアドバイス学習の充実
 ・ 3人組によるアドバイス学習
 ・ 色分けした帯を利用したアドバイス学習
技術

家庭
「生活の中で表現する力を高める授業の追求」
−情報を整理し表現する
           学習活動の工夫を通して−
1 情報を収集するための教材・教具の工夫
2 得た情報を整理し表現するための学習カードの工夫
3 生活をつくる喜びを味わえる実践的・体験的な学習活動の工夫
英語 「個々の『表現の能力』を高め,
コミュニケーションの楽しさを味わえる授業の追求」

−情報収集力の高まりを目指した
                場面設定の工夫を通して−
1 情報を的確に収集する活動の工夫
2 収集した情報を整理し,表現するための工夫
3 「わかる・できる」喜びを実感するための工夫
特別
支援
教育
「社会的な自立につながる『確かな表現力』を
                はぐくむ授業の追求」

−生活に必要な情報を取り出して
              解釈する力の育成を通して−
1 生活単元学習や作業学習において,生徒の「意欲」を高める学
 習課題の検討
2 生活に必要な情報を取り出し,解釈する力を養うための生活単
 元学習・作業学習と教科学習の効果的な関連づけ
3 情報を取り出しやすい教材の工夫
4 社会的自立のための指導課題チェックリストによる実態の評価


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(1) 各教科及び特別支援教育において「確かな表現力」をどう捉えるか

 研究主題「『確かな表現力』をはぐくむ授業の追求」に迫るためには, まず,各教科及び特別支援教育において,確かな表現力をより明確にする必要がある。 そこで,各教科及び特別支援教育における「確かな表現力」の捉え方を以下に示す。

教科確かな表現力とは
国語  表現する目的を明確にしたうえで,論理的思考を用いて組み立てた自分の思いや考えなどを ,具体的な発言や文章として,相手や場面を考慮しつつ展開していける能力
社会  表やグラフ,地図,写真などの様々な情報を正確に読み取り, 論理的に考察した過程や結果を自分なりにまとめて, 表現方法・手段を工夫して,相手に伝える力
数学  事象を数理的に捉え,数学的に考察した結果を,様々な方法を用いて, 筋道を立てて相手に分かりやすく伝える力
理科  多くの情報(自然の事物・現象をはじめ,観察,実験のデータや結果,表,グラフ,写真など)を的確に読み取り, それを科学的に考察して得られた自己の考えを日常言語を科学言語に的確に置き換えて, 根拠を明らかにしながら相手を意識した表現ができる力
音楽  演奏表現の技能だけではなく,音楽を構成するさまざまな要素を感受し, 歌詞の内容を考え,楽曲に対する解釈や想いなど,イメージを膨らませ,表現する力
美術  既習事項や過去の体験・経験を基に,よりよきものを求め,感覚や感性を伸ばし, 表現したい内容をどのように表すかを構想し,よりふさわしく美しく構成の仕方や 表現方法を工夫し表現していく能力
保健
体育
 これまでの運動経験で培ってきた運動感覚を基に,学習課題を設定し, アドバイス学習や学習資料等を活用して思考と動作を繰り返し, 運動技能を高めていく力
技術

家庭
 生活の中の情報を有効に取り入れ,自分の生活に活用し,よりよい生活を想像していく力
英語 1 聞き取ったり読み取ったりしたことについて,相手の意向を理解し, 適切に応じたり,行動したりすることができる力
2 聞き取ったり読み取ったりしたことについて,自分の考えや気持ちを 相手に適切に伝わるように話したり書いたりす
 ることができる力
3 つなぎ言葉を使って積極的に対話が続くように話すことができる力
特別
支援
教育
1 生活に必要な情報を取り出す力
2 情報を解釈する力
3 自ら行動する力


(2) 生徒一人一人が的確に情報を取り出し,解釈させるための工夫

 生徒一人一人が自分の考えや意見を明確に持ち,表現していくためには, さまざまな資料にある数多くの情報の中から,まず資料を絞り, 必要とする情報だけを的確に取り出し,資料を正しく解釈していく必要がある。 その正しい解釈のもと,既習内容や過去の体験・経験との関連を見出し, 情報を整理して熟考・評価していくことで, 自分の考えや意見を明確に持つことができるものと考えた。

 また,的確な情報の取り出しや正しい解釈を重ねていくことで,資料を見る視点だけでなく, 情報を整理したり,再構成したりするための視点も養われ,筋道立てて分かりやすく 表現する力へと結びつくものと考える。
  

○ 実践例(国語科)

   国語科での資料は「文字による資料」「音声による資料」がその中心となる。 「書くこと」において,読み手に分かりやすい文章を書くためには, まず説明に必要な情報の収集活動を十分行い,適切な語句を用いて 内容を理解しなければならない。そこで,身近な題材をもとにして, 情報収集の手立てを図った。左の写真は,総合的な学習の時間に実施した 「甲突川クリーン作戦」の新聞記事や写真等をもとに,情報収集及び 情報の取捨選択を行っている場面である。

○ 実践例(英語科)

   英語科での資料は,「文字による資料」「音声による資料」がその中心となる。 特に,「音声による資料」では,相手が話したことを的確に聞き取る力を高める必要がある。 そこで,毎時間のWarm upで,左の「English Flash」を実施して情報収集力(聞き取る力) の育成を図った。

(3) 既習内容や過去の体験・過去を基に情報を整理し,熟考・評価させるための工夫

 自分の考えや意見を筋道立てて論理的に表現するためには,その基盤として, 生徒一人一人が自分の考えや意見に対して,その思考過程や根拠を明らかにする必要がある。 ここでの自分の考えや意見は,教科の本質に迫るものであり,既習の知識・技能や 過去の体験・経験を基に情報を整理し,十分熟考・評価されたものでなければならない。 そこで,各教科等では学習展開において熟考・評価させるための工夫を図り,実践研究を重ねてきた。

○ 実践例(社会科)

   社会科では,1単位時間の中において,課題に対する意思決定をさせることで, 生徒一人一人により深く熟考・評価する学習場面の設定をした。
 具体的には,統制する幕府側と統制される大名側の異なる立場からみた資料を提示し, 様々な視点から幕府の政策について捉えさせ,自分の考えを成功・失敗の観点から表現させた。

○ 実践例(数学科)

   数学科では,生徒一人一人が事象から取り出した情報を整理するための手立てとして, 付箋の活用を図った。付箋を活用し,自ら得られた情報を再構成することにより ,生徒一人一人の考えを明確にすることができると考えた。
 左図は,相似と合同の場面で,中点連結定理を付箋を用いて, ワークシートにまとめている場面である。これらの学習活動を重ねていくことで, 根拠を明確にしながら表現する力が高まるものと考えた。

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(1) 研究の成果

 ○ 情報の取り出し,解釈の場面や熟考の場面を明確に単元の指導計画の中に位置づけることにより,生徒自身に学習の手順
   をしっかりと捉えさせることができた。

 ○ 情報を整理し,熟考する活動を通して,既習事項や過去の体験・経験をもとに,自分の考えや意見をまとめようとする生徒が
   55%(昨年11月)から68%(本年2月)となり,13%の増加となった。

(2) 研究の課題

 ● 生徒一人一人が既習事項や過去の体験・経験との関連を図りながら自分の考えや意見を持たせる手立てが必要である。

 ● 自分の考えや意見を述べようとはするものの,表現が単発的であったり,根拠があいまいであったりして筋道を立てて表現す
   るまでに至らない生徒も見られた。思考過程や根拠を明確にしながら,論理性をもたせて分かりやすく表現するための工夫を
   図っていく必要がある。

 ●  相手に分かりやすく表現するための内容や方法を吟味し,互いに練り合い,高め合う活動の工夫・改善を図る必要がある。

(3) 研究の方向

 これらの成果と課題を踏まえた上で,本校研究主題に迫るためには,次の工夫・改善が必要となる。

 ・ 情報を取り出し,解釈,熟考・評価を通して,論理的に思考し,明確な根拠に基づいた自分の考えや意見をしっかりともたせる
  ための工夫・改善

 ・ 得られた自分の考えや意見を,生徒が主体的に表現し,それをお互いで練り合い,高め合うことで再熟考し,より確かな自分
  の考えや意見を持たせるための工夫・改善

 そこで,平成19年度は,副主題を「生徒一人一人が確かに表現する活動を通して」として, 単元や単位時間の中で,生徒が自分の考えや意見を表現する活動を通して, 「確かな表現力」をはぐくみ, PISA型表現力の中核部分である情報の取り出し, 解釈,熟考・評価の場面のさらなる充実をはかり, 確かな学力を身につけさせるための実践研究を進めることとし, 現在研究を進めている。

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