平成18年度鹿児島市学校教育研究大会実践中間報告
鹿児島市立宮川小学校
1 研究テーマ(平成16年度〜平成18年度)
| 子供に基礎的・基本的力をつける算数科学習指導はどうあればよいか 〜数と計算の領域の実践を通して〜 |
2 研究テーマ設定の理由
(1)時代の要請から
21世紀を迎え,我が国では,国際化,情報化,科学技術の発展,環境問題など,これまで以上
のスピードで大きな変化が起きている。世間においては、そのような社会に主体的に対応できる新
しい時代の教育の在り方が問われてきている。学校教育においては,ゆとりの中で学び,自ら考え
る教育などの「生きる力」を育成していくことをねらいとし,教育活動の中で基礎・基本の確実な定着
を図ることで,児童一人一人に豊かな人間性や社会性を育成していくことが大切であるとしている。
本校では,平成16年度から3年間,算数科を中心に研究を進めていくこととした。特に算数科に
ついては,文部科学省が実施した教育課程実施状況調査などから,「見通しを持ち筋道を立てて考
える力 」が不足していることが明らかになっている。ここには,知識のみの教え込みになりがちであ
った今までの教育が十分改善されていないことが明らかとなっている。 その教育の在り方を改善す
るには,子どもたちの「学びたい,知りたい」という学習意欲を喚起でき,知識や技能を確実に身に付
けることができる授業を充実していくことが不可欠であると考える。
そこで,本校では,「子供に基礎的・基本的力をつける算数科学習指導はどうあればいいか」とい
うテーマのもと研究を進めていくこととした。
(2) 本校の実態から
本校では,ここ数年の学力検査や児童の実態の分析から,算数科では,「数と計算」,「量と測定」
の領域の力が不足していることが明らかになった。児童のつまずきを分析していくと,例えば,わり算
の場合では,処理する過程で使う2けたのかけ算や,くり下がりのあるひき算などに戸惑いを感じて
おり,スムーズに処理できないという実態があった。また,いずれの学年においても計算力の不足を
感じているという意見が出された。その原因には,各学年の系統性を意識した授業展開の未熟さや,
定着を図るための繰り返し学習の不足など,様々なことが挙げられる。同時に,授業で分かった,で
きたという達成感,満足感を与えることの難しさと大切さも感じている。
そこで,本校では,算数の基礎・基本を,基礎(その学年以前あるいは前単元までに身に付けてお
く力),基本(その単元で身に付ける力)と分けてとらえ,一覧表をもとに,それぞれの単元における基
礎・基本を洗い出し,手立てを講じながら研究を進めていくこととした。基礎・基本が身に付く授業の
あり方を創造していくことで,子どもたちが分かった,できたという実感を味わい,児童の今持っている
算数の力をさらに伸ばしていけるのではないかと考えた。
本研究では特に,「数と計算」領域に絞り,少人数指導,TT指導などの多様な指導方法も有効に活
用しながら,個に応じた指導のあり方も改善していきたいと考える。以上のような実態を踏まえ,研究
を進めていくこととする。
3 研究の仮説
| 算数の基礎的・基本的事項を押さえた指導法を工夫し,単元や一単位時間の中で,形成的評価を取 り入れて,個に応じた定着のための手立てを講ずるならば,子どもたちは,計算ができ,意欲的に学習 に取り組むのではないか。 |
→ 基礎的事項とは?・・・一つの単元に入るまでに身に付けておきたい事項(既習事項,先行経験 等)
→ 基本的事項とは?・・・一つの単元で身に付けたい事項(単元の目標,重要語句 等)
研究仮説については,3カ年の研究を進める中で,徐々に変遷してきた。それは,実践を通して出てきた
課題をより深く追求するために,必要な作業であった。それぞれの年度における仮説は,以下の通りである。
| 【平成16年度】 (仮説1) 算数的な活動を学習の中で意図的,計画的に取り入れていくならば,子どもたちは,学習すること の楽しさに気づき,意欲的に学習に取り組むのではないか。 (仮説2) 算数の基礎的な知識・技能を身に付ける指導法を工夫していくならば,子どもたちは,個々の能力 や個性を発揮し,学習に取り組むのではないか。 |
「数と計算」領域の一覧表を作成し,系統立てた検証の道筋ができた一方で,算数的活動を意識する
あまり,ややもすると活動自体が目的となるという反省が生まれた。また,仮説を検証するための手立
てを明確に分けられないという課題が生じた。一つの仮説にまとめることになる。
| 【平成17年度】 (仮説) 算数の基礎的・基本的事項を押さえた指導法を工夫し,学習の中で算数的な活動を意図的,計画 的に取り入れていくならば,子どもたちは,個々の能力や個性を発揮しながら,楽しく,意欲的に学習 の取り組むのではないか。 |
平成16年度の反省から,ねらいを持った算数的活動のあり方や,本校なりの指導過程が明らかになっ
てきた一方で,子どもたちの事実として,『計算力が向上しているのか?』という課題が出てきた。研究の
証は,子どもの姿で実証されるべきである。職員全体で,子どもたちが「分かったのか」「できたのか」とい
うことに目を向けられるということには,深く,大きな意味がある。そこで,より具体的な仮説へと変更する
ことになった。
| 【平成18年度】(仮説案1) 単元や一単位時間の中に,習熟のための適度な繰り返し学習を計画的に取り入れるならば,子ど もたちは,計算ができるようになるのではないか。 |
・これまで2カ年の研究の成果を踏まえた文言を取り入れる必要があるのではないか?
・単に「ドリル」をさせるだけでよいとの短絡的な考えになるのではないか?
・一つの手立てではあるが,仮説になり得ないのでは? などの指摘により修正する。
| 【平成18年度】(仮説案2) 算数の基礎的・基本的事項を押さえた指導法を工夫し,単元や一単位時間の中に,個に応じた習熟 のための適度な繰り返し学習を取り入れるならば,子どもたちは,計算ができるようになるのではないか。 |
@研究仮説としては,「計算の意味を理解して,計算ができるための仮説」とA「計算ができたかどうか」
の確かめをするための仮説,2つを網羅する必要があるのではないかという意見が出された。このような
課題や指摘,職員の考えを受けて,今年度の仮説が以下のように設定された。
| 【平成18年度】 (仮説) 算数の基礎的・基本的事項を押さえた指導法を工夫し,単元や一単位時間の中で,形成的評価を取り入 れて,個に応じた定着のための手立てを講ずるならば,子どもたちは,計算ができ,意欲的に学習に取り 組むのではないか。 |
4 目指す子ども像
仮説をもとに研究を進めた結果,見えてくる子どもの姿として,以下の子ども像を設定する。
| 計算の意味を理解し,計算ができる子ども |
→計算の意味を理解するとは?・・・計算の仕組みがわかり,その便利さや良さに気がつくこと。
→計算ができるとは?・・・・・・・・・・・新しく学んだ計算方法を用いて問題を解くことができる。
5 研究の内容
仮説の検証のために,次の3点を柱に研究を進める。
(1) 基礎的・基本的事項の分析
@ 児童の実態の分析(学力検査の分析,年度始めと年度末の実態把握,学習前の実態把握)
A 算数の学習指導要領,単元の目標,内容,既習事項,先行研究などの分析
B 教材の選定,教具,学習具の選定や工夫
C 授業単元に関する「基礎・基本」の洗い出し
(2) 基礎的・基本的事項の身に付く指導法の工夫
@ 学習問題の明確化
A 学習形態や学習態勢の工夫
学習形態・・・一人学び,ペア学習,グループ学習 等
学習体制・・・TT指導,少人数指導の効果的な活用 等
B 個に応じた指導
課題別,等数分割,習熟度別グループ
C 評価のあり方の工夫
単元を通した評価,自己評価
D 基礎的事項を身に付ける補充学習のあり方
E 研究授業における視点の設定と授業研究の運営
(3) 算数的な活動の組み立て
@ 授業の楽しさ,達成感を味わえる算数的活動について
A ねらいを持った算数的活動について(手段としての算数的活動と目的としての算数的活動)
6 研究の手順と方法
《平成16年度》
○研究テーマの設定
○研究内容の焦点化
○児童の実態把握(学力検査の分析,年度始めと年度末の実態把握,学習前の実態把握)
○算数的活動の組み立て(授業の楽しさ、達成感を味わえる算数的活動について)
《平成17年度》
〜計算の意味を理解し,計算ができる子どもを育てる〜
○児童の実態把握(学力検査の分析,年度始めと年度末の実態把握,学習前の実態把握)
○算数的活動の組み立て(ねらいを持った算数的活動の設定について)
○基礎的・基本的事項の身に付く指導法
(基礎的事項を身に付ける補充学習,学習形態,学習体制の工夫)
| 《平成18年度》 〜計算の意味を理解し,計算ができ,説明できる子どもを育てる〜 ○児童の実態把握 ○基礎的・基本的事項の身に付く指導法(個に応じた指導,評価のあり方) ○各学年における検証体制確立 |
7 研究の実際
今年度は,年間3回の校内研究授業に加え,研究授業以外の学年においても,それぞれ検証を行うことで共通理解をしている。
検証する単元は,これまでの実態調査の中で明らかになってきた達成率の低い単元,および学年の課題や実態に応じた単元となる。
系統や実施時期等を考慮して,今年度は,以下の単元で研究,検証を行うこととする。
| 時期 | 単元 | 備考 | |
| 1年 | 11月27日 | ひきざん(2) | 第3回校内研究授業 |
| 2年 | 6月26日 | ひきざんのひっ算 | 第1回校内研究授業 |
| 3年 | 1月 | 2けたのかけ算 | |
| 4年 | 10月23日 | 2けたでわるわり算 | 第2回校内研究授業 |
| 5年 | 9月 | 小数のわり算 | |
| 6年 | 11月 | 分数のかけ算とわり算 |
※ 研究の実際については,最終報告にて掲載します。